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 デンマークの社会福祉政策の充実の背後には、徹底した分権制度の存在が挙げられる。分権制度とは、
  1. 地方分権:中央政府から地方自治体への権限の委譲
  2. 住民参加:地方自治体における政策の決定や運営への当事者参加。
 デンマークにおける地方分権は、第二次世界大戦後、その必要性から導入されたものであるが、その必要性とは、自治体機構の統一化、一定の行政サービス確保のため人口五千人から六千人規模への自治体の合併である。1970年に行われた地方自治体改革以前はデンマーク全土で24の県と教会区をもとにした1300あまりのコミューン分割されていたが、改革後は14の県と2つの政令指定都市、273の地方自治体(市町村の区別がない)となった。この地方自治体改革によって中央政府から地方自治体への権限の委譲、いわゆる地方分権制度の基礎が作られたのである。

 

 1974年には、現在の福祉制度の基本となっている「生活支援法」が制定された。この法律は、福祉サービスの提供にあたって社会的に不利な条件にある人たちを対象にするのみならず、日常生活が困難になった国民すべてに一元的に対応できるよう従前の母子、障害者、高齢者といったグループ別の対応をやめ、それぞれの関連福祉法を一本化したものである。さらにその特徴として、自治体行政の窓口を一つにしたため、いわゆる住民に密着した福祉行政が行われるようになったのである。すなわち、国が以前行っていた医療保健、障害者福祉政策などの決定権は県と地方自治体に委譲された。県は医療保健を担当し、病院と家庭医に対する権限と責任を有し、また、障害者の入所、通所施設も県の管轄下となったが、障害者の在宅に関しては地方自治体が責任を負うことになった。

 

 人口18万人のオーデンセ市における福祉行政、特に身体障害者政策についてみると、オーデンセ市の行政組織の実権は民選による市議会にある。諸政策の立案は市議会の各分科委員会、例えば障害者福祉政策に関しては福祉委員会で立案され、市議会で審議し決定される。この福祉委員会のもとに、行政機関として市役所内には福祉局があり、福祉局は母子部、障害者部、高齢者部などの下部組織を持っている。 障害者福祉政策の目的は

 

  1. 障害を持った住民が住宅、治療、生活指導、余暇活動など日常生活に必要な個人的支援を受けられることを保障する。
  2. 障害者自身が障害者であることを認識したうえで彼らの生活が生きがいのあるものとすべく、障害者個々の能力、希望などにつて吟味する。
  3. 障害者が住む地域社会に可能な限り統合するよう支援する。
  4. 現行サービスを受けていない障害者にその提供を受けるよう助言する。
 こうした政策目標達成のため市当局は関係専門職、施設ならびに当事者間との連携協同作業が必要とされる。これが分権制度の住民参加を意味するのである。

 

 特に知的障害者政策に関しては地域社会において、知的障害者たちはサブカルチャーを持つグループであることをノーマリゼーションを理解した上で認識する必要がある。

 

 さらに市当局は政策目標達成のために質の良い情報提供、障害者政策向上のための研修、討論会、公聴会などを積極的に行うべきである。当然、障害者に対して最大限の社会資源を活用し、十分な障害者福祉政策を行うことを旨とするが、政策は変化するものであり、新しい非伝統的な試み絶えず行われなければならない。

 

 さて、ノーマリゼーションの実践は、民主主義、ヒューマニズムが進んでいるといわれているデンマークでも、地方分権化が始まった1970年代からであり、特にノーマリゼーション実践の手段としてのインテグレーションは、1980年から85年にかけて知的障害者のグループから行われた。ノーマリゼーションとは「障害者の生活条件を健常者(社会的に不利な条件にない人たち)の生活条件に可能な限り近づける」ということである、別の言葉では「ヒューマニゼーション」と理解し、人間としてなすべき当然なことなのである。

 

 デンマークにおけるノーマリゼーションの実践を子供と大人の場合にわけて紹介する。普通、子供は18歳ころまで親のもとで生活するのであるから、かつては障害ゆえに施設入所を余儀なくされていた子供も親のもとで生活できるようにする。そのためには、
  1. 支援生活指導員を家庭に派遣
  2. 補助器具の提供
  3. 住宅改造など障害児の在宅のための可能な限りの援助を試みるのである。
 子供の日課は学校へ行くことであるので障害を持った子供も学校へ行くのは当然である。しかし、障害ゆえ不可能なこともあるので、

 

  1. 通常の学校で理解できる科目だけに出席する
  2. 通常の学校の特別学級に行く
  3. 特に知的障害児の場合は養護学校に行く、

という3通りのインテグレーション方法がなされている。

 

 成人の場合は、普通18歳から23歳ごろの間に親離れをするので障害を持った成人も施設入所を避け、グループホーム、ペンション、アパートといったところに居住すべきである。

 

 子供と居住地を別にするということは子離れをするということで障害児を持った親のため?であるため、必要な時点に生活指導員が派遣できる様な支援センターを障害者が点在住する半径約5キロメートル以内のところに設置し、障害者の生活支援を実施する。また、障害当事者が雇用者となってヘルパーを採用し、在宅を可能にしている方法もある。
成人の日課は職場にいくことであるので、障害者も可能な限り職場に行くべきであるが、デンマークには社員の何パーセントかは、障害者を採用しなければならないといった決まりはない。
なぜなら障害者の経済的、物質的な面は国が支給する年金で十分に「健康で文化的な生活を営む」ことができるからである。したがって、生きがいとしての職場として授産施設が十分に完備しており、大部分の障害者が授産施設で働いているのである。

 

 障害が重いため授産施設に行けない人のためには、デイセンター、デイホームがあり、デイセンターは趣味、娯楽を主体として行われる。要するに、「社会的に不利な条件にある人たちの生活条件を可能な限り社会的に不利な条件ない人たちの生活条件に近づける」ことにより人間が生活している社会であることを証明すること、人間性を追求することがノーマリゼーションであり、それを実現している国がデンマークである。

 

 私は、ノーマリゼーションを提唱し、人間性を追求したN.E.バンクミケルセンが、社会福祉政策に貢献したものが大であるので、彼の業績と情熱を後世に伝え、全世界の人々に人間の真のせいかつ、社会福祉が行き渡ることを念願し、N.E.バンクミケルセン記念財団を設立した。私は一生涯を真の人間社会実現のために仕事をしたいと思っている。